家族が大好きだから社会が嫌いになった。名探偵ともちゃんの凄い推理。

◎主な登場人物
主人公:とらこ
探偵:ともちゃん(とらこの幼馴染)
父:おとん
母:おかん
脇役:姉、上司、とんずらした人、若い職人さん、その他職人さんたち

平日は都内の中小企業で働くとらこ。社長は仏様のように優しくフロアの従業員も99%がとらこの大好物のおじさんばかり。(平均年齢65歳)仕事も楽しくやりがいを持って働いているが、ある2つの問題を抱えていた。

それは、決して高くないお月給。そして自分と身内に優しくそれ以外に厳しすぎる上司である。
とらこはこの上司の身内にあたる。(血のつながりはない。上司が気に入るかどうかの話である。つまり、とらこはまぁまぁ気に入られている。)

とらこは大きな罪悪感を抱えていた。それはこの上司に特別扱いをされていることだった。
お月給は高くはないが、この上司の配慮によりとらこは入社3年目で昇格しまくっている。
現場で働く多くの従業員たちは、雨の日も風の日も嵐でさえも必ず出勤して、体にムチ打って頑張って働いてくれているのに、何年頑張ってもなかなか昇格できない。

「給料上げろ!」と本心では思っているのに、自分だけ好待遇を受けることが、とらこは許せなかった。そして、コロナ渦になり好きな時に在宅ワークをするように言われることも、とらこにとってはストレスだった。だって、現場の人たちは在宅ワークなんてできないのだから。

そしてこの上司は、在宅ワークと言いながら好き勝手なことをしていることも知っていた。しかも高給取りで好待遇。(貯金なんて〇億とあるんじゃないかと推測している。)とらこの怒りは何故か上司に向いていた。

好きなように在宅ワークをすることで、この上司と同類になってしまうのではないか。この先もずっとこの上司の手の上でコントロールされるのではないか。そんな不安と怒りをとらこは抱えていたのである。

だから、なるべく在宅ワークは断っていた。それでも上司は在宅ワークを押し付けてくる。しまいには、私用で半日休暇を取っているのに「休暇なんてとらなくていいから、その日は在宅ワークということにしなさい」と、はちゃめちゃなことを言ってきた。

とらこのストレスはMAXになり、急激な胃の痛みに襲われた。
とらこは我慢しきれず、幼馴染に電話をした。かくかくしかじか説明した。

ひとしきり話を聞いた幼馴染はこんなことを言った。

「現場の人に拘っているように見えるね。それって、とらこのお父さんが関係しているんじゃない?とらこのお父さんも現場の職人さんで、たくさん苦労してきたじゃない」

ガ━=͟͟͞͞(Ŏ◊Ŏ ‧̣̥̇)━ン

とらこは衝撃を受けた。ぐうの音も出なかった。

た、確かにそうだった。。。
とらこの父は内装の仕事をしていて、いろいろな店舗や施設に携わっていた。

とらこの子供時代、父の勤める会社もうまく回っていて、とらこ一家はそれなりに悪くない暮らしをしていた。両親がお金に困った様子を見た記憶はなかった。

しかし、リーマンショックにより一気に経済状況が悪化した。
父の働く会社は倒産し、社長に借りていた借家も出ていくことになった。
生命保険も全て解約し母もパートを始め、毎月生活に追われることになった。

父はフリーの現場監督となり、一生懸命家庭を支えてくれた。
がしかし、何か月も携わっていたプロジェクトなのに一切報酬がもらえないことが幾度もあった。

その度母は狼狽し、2人が口論になるようなこともあった。
しかし、父の方針なのだろう。私と姉には詳しい話をするわけでもなく、時々申し訳のない顔の上に「問題ない」という仮面を被って、少しのお金を借りに来るくらいだった。

母も時々は愚痴をこぼしていたが、私たちを悩ませるような細かい話はしてこなかった。

父はとにかく働いていた。雨の日も風の日もどんなに遠い場所でも、そこに仕事があれば通っていた。
だけど、どんなに頑張っても頑張っても、報酬を支払わないままとんずらするクライアントが後を絶たなかった。

そして父は知らない間に消費者金融から多額の借金を抱えていた。
報酬は貰えないのに、作業を依頼した人たちにはちゃんと対価を支払っていた。
いや、本当のところはわからない。父にとんずらされた人がいたらごめんなさい。でも少なくとも私は知らないし知りたくもない。
私たちの生活もある。家のローンもある。
そのために何ヵ所もの消費者金融から、父はお金を借りていたのだ。

かくかくしかじかで、その借金は数年で返済することができた。
しかし、いろいろと片付いてようやく落ち着いてきたときに、父は突然倒れ帰らぬ人となった。

父が倒れたのは大きなショッピングモールの建設現場だった。
オープンを控えて、1か月近く前から父は近くに住み込みで現場に通っていた。
一緒に暮らす若い職人が夜中にポテトチップを食べるからうるさいよ。と困っていた。

父が倒れ、救急車を呼び、最後まで付き添ってくれたのはその若い職人さんだった。

父が亡くなった翌日、1千人近い職人さんが朝礼で父の為に黙とうを捧げてくれたと言っていた。

後日、現場を見に行った私に、皆とても親切にしてくれた。

大嵐の中で行われた告別式にも、たくさんの職人さんたちが来てくれた。

🐯

「現場の人に拘っているように見えるね。それって、とらこのお父さんが関係しているんじゃない?とらこのお父さんも現場の職人さんで、たくさん苦労してきたじゃない」

幼馴染の言葉を聞いた時、よくわかった。

私は社会を憎んでいた。

頑張って働いてくれた父が報われない姿を悲しんでいた。
家族が拗れてしまったのも、憎い社会とそれがつくり出したお金なんだと思っていた。

だから高校を卒業して、企業に入って働くことをずっと拒んでいたのだと気付いた。
山に働きに出たり、できるだけ都会から離れた生活を選んで生きていた。

30歳で初めて就職してからも、いつも上司や幹部社員とうまくいかなかった。
いつも反抗的で粗ばかり探して、そのくせいつも自分は報われないと思っていた。

だけど、どうしてこんなに平等に拘るのかわからなかった。
理由がわからないから自分は元々社会不適合者なんだと思ったり、過去のトラウマのせいにしていた。

こんな風に過去の記憶と繋げたこともあった。↓

もちろんインナーチャイルドが傷付いた経験も問題の原因のひとつにあると思う。でも、その後も上司や社会への不信感は消えなかった。

今まで誰にも読み解けなかったこの難題を、いちばん身近にいる幼馴染が5分で解いてしまった。

ちゃんとした報酬を受け取ることが父や家族を裏切ることになってしまっていたんだと思う。
特別扱いされるなんて禁固100年の刑みたいなものだ。

私の潜在意識には、自分が報われないことで家族への愛を表現していたのかもしれない。

幸せになってはいけない罪悪感

そんなことを師匠はよく言うけれど、まさか「報われたらいけない罪」を自分に課していたとは・・・

🐯

幼馴染との電話を切った後、電車に乗った私は思わず笑ってしまった。

乗り込んだ車両には作業服を着た男性が十何人もズラリと並んで、椅子に座っていた。

父も似たような作業着をよく着ていた。

そして、それから2週間後これまた予期せぬ出来事が起きた。

なんと、3段飛びくらいで昇給したのだ。

あ、ちなみに安月給なので3段飛びしても給与は安い。果てしなく安い。

🐯

名探偵(幼馴染)の凄すぎる推理により、給与が上がっただけでなく私の心はとても軽くなった。
上司のアレコレも以前より気にならなくなった。
そんなことよりも、もっと別のことに考える時間を使おうと素直に思えるようになった。

久しぶりにお金のセルフイメージワーク(お金を擬人化してみる)をしてみたら、ものすごく勢いのある若くてエネルギッシュな応援者になっていた。しかもたくさんいる。

数年前は、私に見向きもしない大スターだったのに。。。

🐯

と、かなりの赤裸々白書でございましたが、もうどうでもいいやと思って書いてみました。

私は今回の件でたくさんの気付きがありました。

・社会を憎む気持ちは、苦しんでいる家族を見て生まれたものであったこと
・自分の直接の経験の中で身に憶えがないのは、そのせいであったこと
・作業着男子に萌えてしまう理由

これを読んでくださった方の中にも、もしかしたら自分でも「なんで?」って思うくらい強烈な拘りに苦しめられているかもしれない。

一生懸命、自分の過去を掘り下げたり経験を振り返ったり、原因を探して彷徨っている人がいるかもしれない。

そんな人にはもしかしたら家族への愛情が関係しているのかもしれない。
家族を愛する故に、自分の中に他者への憎しみを生み出したのかもしれない。

そんな視点でみていくと、スッコーンと抜ける何かが見つかるかもしれません。

まずは幼馴染に相談してみよう。

私も、ともちゃん(幼馴染)にはこのブログを通じて改めて感謝を申し上げたい。
感謝状を渡したいと思う。ありがとう。ありがとう。

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